あなたがユーザーの代表です


山の中の一軒家ならともかく、住宅街で薪ストーブを使う時には十分に近隣に配慮してください。今までに書いてきた煙や匂いの問題の他にも、注意したい点がまだいくつかあります。例えば薪割りやチェーンソーの音、薪をストックする場所や量にも気を配っていただきたいと思います。

なぜこんなに注意点を細かく書くのかと言えば、近隣の人にとって、あなたの日々の態度が薪ストーブユーザーを代表するものになってしまうからです。

例え話をしましょう。現在、どこの家にもテレビがありますが、それでもテレビの騒音がご近所で問題になったりしますね。常識のある人なら、真夜中に大音響でテレビを見たりはしないでしょう。自分の家にもテレビがありますから、このくらいが常識、というのがみんなだいたい分かっていて、夜中は音を小さくしようなどとお互いに配慮しあっています。

しかし、薪ストーブは、まだまだ一般的ではありません。ですから、1日のうちどのくらいの時間使うのか、どんな匂いがするのか、薪はどのくらい置いておくものなのか、ご近所の方は分からないのです。正直言えば、薪ストーブ初心者のあなた自身も、まだよく分かっていないのです。そして「都会における薪ストーブの正しい使い方」という基準も、常識も、まだまだ確立されていないのです。ですから近所の人にとって、あなたの使い方=薪ストーブの使い方、というストレートな解釈となり、万が一、誰かが変な使い方をしようものなら、「薪ストーブはけしからん。薪ストーブユーザーはみんな変人だ」などという偏見がまかり通ってしまうのです。

ある日、隣の家の煙突からモクモクと煙が出てきました。しかしこれが何時間続くのか、お隣さんには分かりません。洗濯物を干しても大丈夫なのか、あれは煙の出すぎなのではないか、そのまま出かけてしまったけど火事にはならないのか、庭先に積んである薪はどんな木なのか、虫は付かないのだろうか……、もしお隣の方が心配性だったら、大変です。だって自分の家には薪ストーブは無いし、見たこともないのですから。

こうした心配を解消するには、やはり普段からのコミュニケーションが大切です。「だいたい、夜は10時ごろまで薪ストーブを使います」とか「薪ストーブをつけたままで外出していますが、吸気を調整しているので自然に消えるんですよ」とか、会話が持てれば近所の方もだんだん安心してくれるでしょう。今の世の中、隣近所の方は、多少心配があってもまずは黙っている人が多いものです。もしかしたら我慢しているのかもしれません。こちらから「薪ストーブの煙は大丈夫ですか」と声をかけるほうが、礼儀というものではないでしょうか?

ご近所トラブルは、薪ストーブに限りませんね。原因はゴミの出し方であったり、ペットの鳴き声であったり、ピアノの音だったりします。結局、配慮の足りない、わがままな住民が、近隣のヒンシュクを買うのです。その人の人間性が問われているのです。

近所の人に嫌な使い方をされたばっかりに、薪ストーブが大嫌いになった、という話も聞いたことがあります。薪ストーブ屋としては、悲しい限りです。薪ストーブは正しく使えば素晴らしい暖房器具なのに……。せっかく夢をふくらませて薪ストーブを導入したユーザーさんにとっても、非常につらい事態です。

普段からしっかりとご近所づきあいをされている方なら、私がこんな心配をする必要は無いのかもしれません。しかし薪ストーブのイメージを壊したくなくて、いらぬ心配、余計な口出しをしてしまうのです。

あなた自身が心地よく薪ストーブを使い続けるためにも、ご近所の理解があれば心強いですよね。私も煙突の工事中などに、通りがかりのご近所の方から話しかけられることがよくあり、そんなときは手を休めて丁寧に質問に答えるよう心がけています。一人でも多くの方に、薪ストーブに対する理解を深めてほしいから……。

私の印象では、薪ストーブを導入する人は家族思いで、夫婦仲の良い人が多いです。やはり暮らしを大切にしようという意識が高いのでしょう。薪ストーブはアナログな道具ですから、家族みんなで協力して使いこなす必要もあります。あなたのそんなライフスタイルを見て、「薪ストーブって、いいみたいだね」「いつか、我が家にも欲しいね」という人が増えてくれたら、とても素晴らしいと思いませんか?

HOME

薪ストーブと災害

都会における薪ストーブ

薪ストーブとは長いおつきあい




筆者:鷲巣 勤プロフィール

薪ストーブショップ『ブロス』のオーナーとして薪ストーブの世界にかかわること25年あまり。自宅ではバーモントのアンコールを使用。横浜店ではモルソー・7140を、山中湖店ではデファイアントとヨツールF500を楽しんでいる。