薪ストーブと、大気汚染

お隣さんは快く了承してくれたのに、煙突を建てていたら、6軒先の家から苦情が来た、という例もあります。近頃は昔と違って、やや神経質な方が増えている傾向もありますが、こんなとき話がこじれてしまうと、本当にやっかいです。

薪ストーブは大気を汚染しているのでしょうか? 薪ストーブの排気中には微量ですが微粒子が含まれています。そこで、薪ストーブの匂いや煙について規制を設けている国があります。例えばアメリカの場合、アメリカ環境保護庁(EPA)が薪ストーブの排気中の排出汚染物量の基準値を定めており、この数値をクリアしない薪ストーブは販売できないことになっています。つまり乗用車の排ガス規制と同じようなタイプの規制が、薪ストーブにもあるのです。EPAが発表したデータによれば、日本で取り扱われている有名メーカーの輸入薪ストーブは、ほとんどがこの基準をクリアしています。逆に言えば、欧米で販売されていない薪ストーブは基準をクリアしていない可能性もあるのです。

またEPAは、薪ストーブの焚き方にも言及しており、シーズン前には「賢く燃やそうキャンペーン」などの啓蒙活動も行っています。このキャンペーンでは「よく乾燥させた薪を使うこと」「塗装された木材や化学処理された木材、ゴミを燃やさないこと」などを提示し、「毎年、資格のある業者に点検してもらい、煙突のススなどは取りのぞきましょう」と呼びかけています。また、アメリカでは旧式の薪ストーブや暖炉を使っている家庭もまだまだ多いことから、「新しい基準をクリアした薪ストーブのほうが、空気を汚さないだけでなく、燃焼も良く、燃料代も安い」ということを積極的に広報し、新しい機種への買い替えを提案しています。

一方、日本の環境省にはこういった薪ストーブに対する規制はありません。まだまだユーザーも少ないからでしょうが、今後薪ストーブ利用者が増えれば、基準が整えられていく可能性があります。

薪ストーブが好きな人間からしてみれば、焚き火や薪ストーブの煙や排気は、なんとも言えない心地よい匂いです。しかし、気管支の弱い方やぜんそくなどの持病のある方にとってみれば「ディーゼル車とどこが違うの? 微粒子やガスが含まれているのだから、同じでしょう?」と思うのです。

EPAのデータは、一つの説得材料になります。しかし、いくら環境基準をクリアした薪ストーブでも、使い方が悪ければダメです。「煙がモクモク出ていると言って、近所から苦情が来た。お宅のストーブに欠陥があるのでは?」とお叱りを受け、見に行ってみると、まず燃やし方が悪い場合がほとんどです。乾燥していない薪を燃やしていたり、燃やすものが無いので新聞紙を燃やしてしまった、などという例もありました。ちなみに紙類を燃やすと、煙だけでなく燃えカスもヒラヒラと煙突から舞い落ち、洗濯物を汚してしまったりします。大気汚染以前の問題です。

着火の時に多少の煙が出るのは異常ではありません。しかし、しっかり燃焼をすれば、数分で煙は非常に少なくなるはずです。慣れないうちは、ときどき外に出て、煙突からの排気を確認してみるといいかもしれません。

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筆者:鷲巣 勤プロフィール

薪ストーブショップ『ブロス』のオーナーとして薪ストーブの世界にかかわること25年あまり。自宅ではバーモントのアンコールを使用。横浜店ではモルソー・7140を、山中湖店ではデファイアントとヨツールF500を楽しんでいる。