薪ストーブと、ご近所づきあい

薪ストーブがメジャーになるにつれ、お客様から「ご近所づきあい」という話題をチラホラ耳にするようになりました。

ちょっと前まで、お金持ちとか別荘とか、そんなイメージがあった薪ストーブ。しかし今ではごく一般のご家庭でも、設置されるケースが増えています。薪ストーブ屋としては本当に嬉しい限りですが、やはり住宅街の真ん中となると、さまざまな問題が出てくるようです。

中でも、ご近所への気配りが欠かせません。

いくら最近の薪ストーブの性能が良くなったからといっても、やはり多少の煙は出ますし、匂いもします。少しだから大丈夫だろうとタカをくくっていると、近隣から思わぬ苦情が寄せられて悩まされることになります。まずは、苦情が出てしまう前に手を打っておくのが一番です。

家を新築や改築する際、工務店が着工前にご近所へあいさつ回りをしてくれる場合があります。タオルなどを持って「○月ごろまで新築工事をします。工事中は十分に配慮しますが、多少音が出たり、工事車両が出入りしますので、ご了承ください」という具合です。隣家だって、いつ工事が必要になるかわかりませんから、そこはお互いさま。大抵は「はい。了承しました」ということになります。そんなとき、家主さんとしても挨拶を兼ねて一緒に出向き、薪ストーブについて少し説明すると、いいのではないでしょうか。

「今度の家には、薪ストーブを設置することになっています。薪を燃やすので、着火の時などには少し煙と匂いが出ますが、今の薪ストーブは使用中あまり煙が出ないと聞いています。私共も十分注意しますので、よろしくお願いします」

まずはこんなご挨拶をしたらどうでしょうか?

私が隣家の主婦だったら、きっとこんなことを心配します。「どのへんに薪ストーブを置くのかしら。煙突の向きは、うちの方なのかしら。うちの洗濯物にススや匂いが付いたりしないかしら……。家の中に匂いが入ったりしたらいやだわ……」

ですから相手の立場に立ち、煙突の場所などを質問されたら、できるだけ詳しく答えましょう。もちろん設計の段階で、煙突の場所や高さをよくシミュレーションしておく必要があります。隣家の窓や出入り口のすぐ脇に煙突が……、というのは、どう考えても非常識ではないでしょうか。隣家の吸気口の位置なども再確認が必要です。

隣家がマンションという場合もあります。私のところに来たお客様で、どうしても隣のマンションの3階あたりに煙突が来てしまうので、薪ストーブ導入をあきらめた方もいらっしゃいます。住宅街でのご近所付き合いは大切ですから、残念ですが仕方ありません。こんな場合、無理して導入しても、後から苦情が寄せられて、結局薪ストーブが使えなくなってしまうことも考えられるのです。

ユーザーのことを親身になって考える優良な薪ストーブ屋なら、住宅の条件やユーザーのライフスタイルをよく知った上で、最も適した薪ストーブや煙突の設計を勧めます。そしてもし、導入に無理がある場合は、「残念ですが見送ったほうがいい」と、正直に伝えるでしょう。薪ストーブを愛する立場の人間は、上手に、快適に使ってほしいと思うのです。しかし残念なことですが、後先を考えず、強引に薪ストーブを売りつけ、後は知らんふりという薪ストーブ屋もいるのです。

どんな場合でも、最終的に導入を決めるのは、お客様です。後で近所づきあいのトラブルが出てきても、それは利用者責任ということになります。私もユーザーさんに依頼され、ご近所に説明に伺ったことも多々ありますが、残念ですが薪ストーブ屋がトラブルを解決できるわけではありません。

薪ストーブの正しい使い方を守ることが最も重要ですが、設計の段階から近隣への配慮をしておけば、トラブルも未然に防げるのではないでしょうか。

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筆者:鷲巣 勤プロフィール

薪ストーブショップ『ブロス』のオーナーとして薪ストーブの世界にかかわること25年あまり。自宅ではバーモントのアンコールを使用。横浜店ではモルソー・7140を、山中湖店ではデファイアントとヨツールF500を楽しんでいる。