薪、薪、薪!

薪ストーブユーザーが毎年頭を悩ませるのが、薪の確保です。

割ってある薪を買うこともできますが経済的に大変ですから、皆さんいろいろと工夫されています。伐採した丸太をもらえれば、大喜び。しかし丸太をもらったら最後、チェーンソーで玉切りし、自分で割って薪にしなければなりません。

仲の良い薪ストーブユーザーが、こんなことを話してくれました。「毎年毎年、薪を集めるのは本当に大変だよ。春から秋まで、ずっと薪のことが頭から離れない。来シーズン分の薪はどうしよう、誰かくれないかな。安く買えないかなと期待するんだけど、そんなにもらえるものじゃないね。毎年、結局足りなくて、夏の終わりに丸太を買う。そしたら今度は、割らなくちゃならないのがプレッシャーになるんだ」

この方のお住まいは寒冷地なので、大きな薪ストーブを暖房のメインとして使っていて、10月から4月ごろまで焚いているそうです。薪もかなりの量が必要です。

「初めに比べると、薪割りはだいぶ要領が良くなった。寒くなる前に割り終えて、ぜんぶ薪小屋の屋根の下に入れて、ホッとする。でも今度は、乾燥した薪は春まで足りるかな?と心配になるんだ。1月でここまで、2月でここまで、と計算しながら燃やしているよ。」

「やっぱり年とともに体力はだんだん衰えるし、いつまで割れるかな、とか、息子が割れるようになるのはいつかな、なんてことも考える。いつかは割った薪を買うことになるのかな。そんな金銭的余裕があればいいけどね」

「でもね、サラリーマンは外で働いて、家族の前では仕事しないでしょう? けれど僕は薪割りをする姿を子どもたちに見せられて、よかったなあと思う。父親が自分たちのために、文字通り汗水たらして働いている姿を見せられるんだよね。そして、自分自身も、家族のために働いているぞ、っていう確かな手ごたえを感じるよ。デスクワークとは違う充実感、達成感みたいなものかなあ。体を動かす野良仕事って、本当にお勧めするよ」

「割った薪は、家族全員で協力して薪小屋に積む。子どもたちも、結構面白がって働くよ。うちでは、薪ストーブの着火は妻の仕事。毎朝灰を掃除して、着火するのにたぶん10分くらいかかるかな。ファンヒーターやエアコンならスイッチポンで一瞬だよね。でも、ちっともめんどくさくないって。楽しいって。彼女も僕が薪割りで感じているみたいなことを、なんとなく感じているんじゃないかな」
「たしかに薪の確保は大変だけど、毎年そんな思いをしても、薪ストーブは本当にいいよ! こんな暮らしができたらいいなあと思っていたけど、今それが実現している。だから薪割りも苦じゃないんだよね。いや、苦だけど……(笑)」。

私はこの話を聞いて、この仕事をしていて本当に良かったなあと思いました。

薪は再生可能な自然エネルギー。特に日本には豊かな森林資源があり、有効利用されないまま放置されている場所もたくさんあります。この森林資源をもっと上手に薪として活用できないか、といつも思います。山は手入れされ、住宅街で薪ストーブを使う人が、もっと手軽に薪を確保できたら、どんなにいいでしょうか。でもそれもそれほど遠くない将来には実現するかもしれません。一時期環境省では薪ストーブ設置に補助金を出していました。現在でもある地方都市の自治体は薪ストーブ設置に補助金を出しています。薪ストーブユーザーが森林ボランティアを行う例も増えているようです。林業が衰退し山が荒れ自然災害を誘発しる現状、温暖化抑制のためのバイオマスエネルギーへの関心や原発事故に起因するエネルギー不安・・・それらすべてが薪ストーブに追い風にもなっていると感じています。今までお話ししたように、薪を燃やすことは様々な弊害もあるのは現実です、しかし、一方で薪が現代社会から期待されているエネルギーであることも事実としてあります。

薪ストーブの人気が定着し、正しい使い方についてもだいぶ浸透してきたように思います。薪ストーブ屋としての次の課題は、やはり薪のことです。薪の確保について、いろいろな入手方法を考えたり、それを紹介したり、一緒になって手に入れたり、手ごろな価格で販売したり……と、思考錯誤しながらぼちぼち取り組んでいこうと思っています。

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筆者:鷲巣 勤プロフィール

薪ストーブショップ『ブロス』のオーナーとして薪ストーブの世界にかかわること25年あまり。自宅ではバーモントのアンコールを使用。横浜店ではモルソー・7140を、山中湖店ではデファイアントとヨツールF500を楽しんでいる。